GUNSLINGER GIRL

アニメ版を最近まとめて見る機会があった(全13話。2月末で放映終了)。たいして期待もせずに見始めたんだけど、いろんな意味でものすごいアニメだった。

まず設定が非道い。舞台は現代(?)のイタリア。一家惨殺の生き残りで心身に障害を負った者、先天性の全身麻痺患者、児童売買の犠牲者、保険金殺人未遂の被害者等々、見捨てられた境遇にある少女らが福祉施策の名目で全国から選ばれ、ほぼ全身を機械の体に置き換える改造手術(!)を受ける。同時に「条件づけ」と呼ばれる薬物を用いた洗脳が施され、プロの暗殺者としての技術を心身に叩き込まれる。その際、改造以前の記憶は消える。少女らは社会福祉公社という名の政府の秘密諜報機関に所属し、指導者・教育者でもある担当官とペアで特殊活動に従事する。

こんなんで半裸に近い格好で元気にマシンガン抱えて走り回ってるならふつうの話(?)なんだけど、中身も外見も(ただし身体能力は強化されている)なぜか思春期のふつうの女の子だったりするので始末が悪い。担当官には絶対服従。というか、本能として担当官を護り、その命令に従うよう条件付けされているのだが、これが当人たちにとっては恋愛感情と区別がつかない(これが原因で予想外の事件が起きる)。結果、担当官に寄せる恋心を秘めながら顔色を変えずに銃・ナイフ・徒手空拳でターゲットを殺し、その人数を喜々として誇る、という構図になる。まんまハンターと猟犬の関係である。これはもう十分にやばい。さすがにこんなものが夕方のお茶の間で放送できるはずもなく実際深夜の放送だったし、倫理コードに厳しい海外で放送できるとは到底思えない。いや、べつに放送する予定はないみたいだが。

ただ、このように非人道的な設定にもかかわらず、描かれる話はじつに静謐かつ情緒的である。作戦行動中に傷を負うと、手術に耐えるため薬物を投与される。その他にも条件付けを変更・強化するたびに薬物が使用される。そのつど彼女らはいくばくかの記憶を失う。殺人技術を行使するとき以外はふつうの女の子であり、それなりに日常でつくられる思い出もある。そうしたものが蓄積されることがないというのは想像以上に残酷であることに改めて驚く。

担当官にもいろいろな人間がいる。少女らを「普通の女の子」として扱う者、殺人の道具としてしか見ない者、どう扱っていいのか迷う者。そうした違いがあるにもかかわらず、少女らは多少の差異はあれ担当官に強い心情的な結びつきを持っている(持たされている)ため、担当官によっては少女の忠誠心が報われない、といった悲劇的な事態にもなる。これがじつに哀れだ。作中ではアンジェリカ、エルザで顕著。

人間と犬、人間とロボットという組み合わせならまだしも、人間と少女らしきもの、という組み合わせが頭がくらくらするような異常な状況を生み出して見る者を混乱させていることは確かなのだが、加えてその状況に置かれた担当官と少女たちの心の動きが丁寧に描き出されており、それが大きな成功を収めている。全話通して見て、例の最終話を見終わった後はもう、呆然とするしかなかった。(あそこで第9がふさわしかったかどうかはともかく)近年まれに見る傑作、というかそれに語弊があるとすれば問題作であることは間違いない。とはいえ小説、映画の『バトル・ロワイヤル』が世に出たのだからこういうのもありだろう。傑作と言い切っていいかも。

作画、声優陣はもちろん特に音楽もよかった。作り手の意気込みがびんびん伝わってきた。原作を読むとアニメはほぼ原作を忠実になぞってつくられたことがわかったが、独自のエピソードがもりこまれていたり、より突っ込んだ描写が加えられるなど、原作の設定・ストーリーを押さえた上でより豊かな作品に仕上がっている。今後もどこにこれだけの魅力があるのか、何に心を動かされたのかを考えつつ何度かシリーズを通して見直すことになると思う。大変大変。

http://www.fujitv.co.jp/b_hp/gsgirl/index.html

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